KP41問題の歴史を振り返り、「何が原因で」、「どういう経緯で」KP41問題という考え方が生まれ、そして間違った解決方法が広まってしまったのか・・・?を考えてみるページです。

このページでは、2011年~2012年、なにが原因でPCに(原因不明の)トラブルが発生しやすかったのか?なぜKP41問題はややこしくなったのか?を考察しています。

KP41問題がややこしくなった要因

以下、この時期のPCにどのような問題が起きていたか?その原因は何か?を具体的に考えてみます。

2011年~2012年以降の、過去のPC環境との大きな違い

以下、2011~2012年に登場(または普及)した、新しい製品や技術をリストアップしてみます。
そして、この中にKP41問題の原因になると思われるものが含まれている、と仮説を立てて見ます。

2009~2010年頃にごく一部ユーザー環境でのみ発生していた不可解(に見える)エラーが、2011年以降はコアなユーザーのPC環境ではかなりの数、一般的なPC環境でもごく一部、発生するようになりました。

これらのPCの症例な、ぱっと見た感じでは酷似したものですが、原因は全く別のものだったと推測できます。

以下、個別の項目の詳細を記します。(大半は私の推測になります)

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SandyBrigeの登場

  • 2600Kをはじめ、オーバークロックが容易かつ高耐性なCPUが登場し、多くのPC自作erやBTOユーザーがこれに飛びついた。
  • しかし、高クロックで常用するには、それなりにコツが必要だった。
    • オーバークロックする際、今までは最大負荷をかけてストレスチェックをすればセッティングが完了していた。SandyBridgeでは、アイドル時や中途半端な負荷がかかった時でも、適切に設定する必要が出てきた。
    • これは、省電力設定が新しくなったWindows7で顕著に発生した。
    • 過去のオーバークロック手順と異なり、急激な負荷変動が発生する場合も適切に設定する必要が出てきた。
      • この項目に含めるのが適切かどうか解らないけど、以下もチェック
        • USB機器が不安定なる現象も、これに含まれると推測されるか?
        • USB機器にわずかなノイズが発生してもOSが不調になる可能性がある?
          (キーボードやマウスでさえも相性問題が出る)
    • あと見落としがちだけど、前世代のCore iシリーズと同様、(オーバークロック時は)CPUのベンチマークテスト通過だけではゲームプレイ時に落ちる事があった。
      (CPUのアンコア部分にも適切な昇圧が必要)

インターネット上で収集できるKP41関連の情報は、(このサイトの情報も含め) その多くはこの時代のオーバークロック関連の情報で構成されています。

この頃に語られたKP41問題の解決方法は、オーバークロックしないPCには関係の無い話でしたが、一般的なPCの場合はKP41問題の原因と解決方法は語られる事がなかったため、オーバークロック関連のTipsのみが広まってしまった感があります。

余談:Haswell以降

Intelの新しいCPU、Haswell世代では、新しい電源ステートであるC6/C7ステートが機能が追加されています。
※ C1(スタンバイ)C3(スリープ状態)より更に電力をカットする事が可能。
※ Haswell世代のCPU/マザーの場合は、スリープ時に電源から0.05Aの電流が安定供給できないとスリープ復帰時にシャットダウンする場合がある。

C6/C7ステートに対応した電源や、最小負荷電流がほぼ0Aな電源を利用しないと正常にスリープさせたり、スリープから復帰させることは出来ません。

参考リンク: Haswellで非対応電源を使った場合はどうなるのか? : 例の場所BLOG

ACPI 5.0 の仕様策定

2011年11月、ACPI 5.0 の仕様が策定されました。
これ以降は、この規格に従った省電力設定の機能を持ったPCが登場することになります。

ものすごく乱暴な考え方ですが、この ACPI 5.0 の仕様そのもの、または策定の時期が、KP41問題と深い関係があるのではないか?という予想も出来ます。

この件については、ちょっと長くなるので別ページを用意しました。
KP41 病の歴史を振り返ってみる(ACPI編)

UEFI対応マザーの普及

今のところ、(私の個人的な考えでは)KP41問題とは無関係な気がしてます。
なので、ここでの言及はありません。
時期的に2011~2012年に重なっているので、このページではついでに記載している程度です。
(またUEFI対応マザーの本格的な普及は2013年以降であり、「KP41問題が多発した時期と微妙にずれている」と見るのが良いと考えています。)

スマホ・タブレットの普及

スマホやタブレットの普及自体は、KP41問題と全く関係ありませんが、それに伴ったUSB充電器の普及が大きな問題だと思っています。

  • USB2.0コネクタの最大電流は500mA、USB3.0コネクタの最大電流は900mA。
  • USBの規格以上に電流を流すと、USBコネクタは簡単に破損してしまう。
  • しかしスマホやタブレット機器の充電コネクタは、1000~2000mAの電流を要求するものが多い。
    • これが原因でUSBポート/コネクタが破損した。
      • 大量の電流を長時間流すと、USBコネクタは破損しやすい。
      • 破損したUSBコネクタに通常のUSB機器を接続すると、PCは誤作動をおこし、ブルースクリーンエラーを発生するケースがある(無線LAN子機で発生しやすい)
    • 参考: USBの最大供給電力
  • Windows8.1以降、一部の機種ではUSB機器への充電ができなくなった。
    • 参考リンク: Windows 8.1は一部USB機器を充電できない・・・?
    • USB充電によるPCへのダメージが、KP41問題の一因になっていたため、メーカー側はこういう対策を取らざるを得なかった、という可能性も十分にある。
    • 「給電(充電)専用のUSB機器」と「通常のUSB機器」を同時に利用する場合も、PCが誤作動を起こす危険性がある。
    • Windows8.1以前のPCでも、取扱説明書を読むとバッテリーの充電はメーカー保証外となっている製品はとても多い。よく読んでみよう。
  • 余談(KP41問題と無関係な話)

USB3.0ポートの普及

  • USB3.0コネクタ/ケーブル/機器から発するノイズは、2.4Ghz帯無線LANやWi-Fiの電波と干渉しやすく、無線LAN機器が誤作動を起こしやすくなる。
  • PCにUSB3.0が採用されるようになったのは2011年以降。
    • ただし、当時のPCでは1ポート搭載がやっと、またはUSB3.0本来の性能は引き出せていない場合がある。
    • 消費電力、バンド幅、ノイズ対策、諸々の理由でPCの「中~高負荷時」にUSB3.0機器を安定して使うのは難しかったと思われる。
      • 私の場合、USB3.0にUSB2.0ハブ接続し、そこにマウスとTVチューナーを接続してたら「スリープ復帰失敗」「CPUに中程度の負荷をかけるとBSoD」などの症状が発生するようになりました。
        (当時の記事: Kernel-Power 41問題と対策メモ)
        (USB2.0コネクタにUSB2.0ハブを繋ぎなおしたら安定しました。)
    • USB3.0ポートが 帯域が十分に確保された状態で 本格的に搭載されるようになったのは2014年になってから。

東北大震災による、慢性的な電力不足

KP41病が多くのPC環境で問題視しはじめたこの年は、東北地方太平洋沖地震が発生しています。

この項目は、震災に遭われた方々から見ると不謹慎かつ些細な項目になってしまいますが、新しいCPU (SandyBridge世代) や、省電力規格 (ACPI 5.0)の登場とほぼ同時に電力不足が起きた事も、この症状(KP41病)にいち早く直面した人に混乱を与えていた、と推測できます。

  • 東日本全体で電力が不足し、特に夏場は、家庭用コンセントの電圧が不安定になった地域が多く発生した。
  • こういう場合、ゲームやオーバークロックなど、PCに(常に)高い負荷を与える用途では、PCの作動が途端に不安定になり、原因不明(に見える)ブルースクリーンが多発します。
  • そしてこの時期は、Core i7 2600Kを入手したパワーユーザーがオーバークロックの限界に挑戦した時期と一致しており、この電力不足が「OCしつつブルースクリーンの発生しないギリギリを極める」という行為を非常に難しいモノにしていました。
  • この電力不足に気が付かない場合、ユーザーはブルースクリーンの原因を特定できないことになり、「KP41問題=原因不明」というイメージが、必要以上に先行したのかもしれません。

電圧降下が発生すると、何が起きるのか

電圧降下が発生すると、機器によっては想定以上の電流が流れ、機器が加熱したり、破損したり・・・という困った現象が発生します。

参考リンク(PCとは関連薄い)
 ・電圧降下と過電流についてHITACHIのオイルフリ... - Yahoo!知恵袋
 ・過負荷と過電流の違いについて | 技術の森 過去ログ | 挑戦する製造業のために/NC

参考リンク2

 ▲2012年2月頃のある技術屋さん(?)のツイート。
  • 電圧が降下しても、一定の消費電力を保とうとする機器には、大量の電流が流れるようになり、想定以上に発熱します。
    • 過度に発熱したり電流が流れたりすると、プロテクタの付いた機器の場合、緊急停止します。
      (PCの場合、KP41病のような症状が発生することがあります。)
    • プロテクタの付いていない機器の場合、故障や劣化の危険が高まります。
      (PCの場合、故障・劣化後は電源の出力が落ち、KP41病のような症状がおきます)
  • PCの場合は、電源ユニットやACアダプタ、UPSなどのAC/DCコンバーター部分が大きなダメージを受けます。一般家電の場合は、冷蔵庫やエアコンなどのモーターが、特に影響を受けやすいです。
  • 2009~2010年頃に購入したPCが、2011年末~2012年夏頃のドコかのタイミングで、突然KP41病のような症状に陥る可能性も、十分にあります。
  • 2011年~2012年夏頃に、これが原因でKP41病が多発したPCの場合、電源ユニットに大きなダメージが加わっている可能性があります。
    この場合、電源を取り替えなければKP41病(のような症状)は解消しません。

おまけ: 安物電源、安物PCの寿命について

PCの電源関連のお話をしたので、ついでに補足

  • 新品時の定価が7~8万円以下の安いPC (特にBTOや通販系のPC)の場合、毎日8~10時間利用するような環境では、電源の寿命は3~4年程度だと思っておきましょう。
  • 2011~2012年の、慢性的な電力不足の状況下で使用したPCの場合、電源ユニットの寿命はそこからさらに1年は短くなっていると思っておきましょう。
  • 購入後2~3年経った所でPCが頻繁に不調になる場合は、電源ユニットを交換してみましょう。

ここまでのまとめ

上記、いずれの場合でもPCは不安定になり、PC再起動やハング、ブルースクリーンの発生、スリープ復帰の失敗が起きるようになります。これらはぱっと見では原因不明の症状(KP41病)の様に見えるため、ネット上で情報を探すと、オーバークロック時の挙動を安定させるための情報にたどり着く可能性が大きいです。

しかし、そこで語られる解決方法は、自身のPCでは試せない or 問題が解決しない・・・という状態になり、ますます混乱してしまう・・・という状況が発生したと考えられます。

このページの情報は以上です。
次回更新では、(このページで解説を飛ばした)ACPI関連のお話をする予定です。

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