2015.07.10:項目「今回のテストでは、「GH4の方がノイズが酷い」という噂の検証にはならない模様」を追記
2015.04.06:ハイライトシャドウの設定数値の表記順序を修正
2015.04.05: 初出
パナソニックのデジカメGH4の、非常に暗い所での動画撮影の性能のお話です。
ネット上でGH4のレビューをあれこれ読み漁ると、「動画撮影時の高感度耐性は、GH3より劣る」とか、「ローライト時はGH4の方がノイズが酷い」などの情報をチラホラ見かけ、心配になったので撮影チェックしました。
自分で確かめたい理由
私の場合、極端にローライト演出を施す舞台をよく撮影するから。
- 私の撮影したいシチュエーションで無事撮できるのか?
- どのような画が出てくるのか?
これらを事前にチェックしておきたかった。
撮影テストに使った機材
- GH4
- Lumix 12-35mm F2.8
テストで変更した設定
GH3との比較を前提として- 「ピクチャースタイル」と「iDレンジコントロール」、この2点のみを変更
- GH4やGX7以降で搭載された
「ハイライトシャドウ」や「マスターペデスタル」
の設定は、デフォルトのままでテストしています。
(これについては次回更新でチェックする予定)
注意点:
撮影テストにあたって、ホワイトバランスの調整を全く行っていません。
撮影データの色味が違うのはそのためです。
先に結論
「GH4の方が高感度耐性悪い」という噂は、GH3とGH4では、ネット上に出回っている推奨設定が大きく違うために発生したものだと感じた。
GH4以降ネットで広まっている「ダイナミックレンジを広く取る設定」は、(すげえ明るく撮れるけど)ローライト撮影にホントに強くない。露出不足になるとノイズやブラーがもの凄く発生する。
- 同じ明るさで記録されるようにセッティングすると、GH4の方がノイズ量は少なく感じる。ノイズに関しては(好みの問題はあるけれど)GH4の方がキレイに写る。
- ただし、ノイズが少なく感じるのはGH4の方がノイズリダクションが強く効いているのが原因。
- 被写体の明るさが、あるレベルを超えて暗くなると、ノイズリダクションに起因するモーションブラーが非常に強く発生するようになる。GH3より汚いブラーが発生する。
- GH4の方が、ローライト時の増感を強く設定できる。モーションブラーの発生を無視すれば、GH4の方がローライト撮影に断然強い。
2015.07.10追記:今回のテストでは、「GH4の方がノイズが酷い」という噂の検証にはならない模様
2ちゃんデジカメ板でこのURLが引き合いに出されているスレッドを見ました。
284 名前:名無CCDさん@画素いっぱい[sage] 投稿日:2015/06/22(月) 23:10:13.34 ID:nrN7EjGn0 [2/2]
>>270
誰も使わない常用外のiso6400の検証では何の参考にもならんでしょ
3と4の両機を使ってノイズ、潰れについて不満を感じてるユーザーはシャドーノイズだったり常用感度(俺は640まで)でのノイズ、破たんのことだろうし
なるほど。問題にしている方々は、ISO400~800あたりのノイズのお話をされている感じなのですね。
確かにISO800~1600のノイズは、GH3より少し悪くなっているかな?と思いますが、、、うーん。ノイズ乗ってあたりまえで基本的に高ISOで撮ってる私的にはあまり気になりませんでした。。。
追記終わり。本文に戻ります。
テスト1: 調光卓ライトを極限まで暗くしてみる
手持ちの調光卓ライトを、極限まで暗くして撮影してみました。
個人的に「このくらいの暗さまで撮影したい」という基準を遥かに下回る光量です。
撮影場所(蛍光灯つけた状態でスチル撮影)
▲机の上
SS30/F2.8/ISO800 / NAT -5/-5/-5/0/0
その他の設定は初期状態
卓上灯を最小限まで暗くしてみます。
スチルで撮影すると、これくらい暗いです。
▲クリックで拡大
SS30/F2.8/ISO6400 / NAT -5/-5/-5/0/0
その他の設定は初期状態
この状態でビデオ撮影すると、(露出不足の時は)ISO値以上に増感されて記録されます。この増感は、クリエイティブ動画モードの時のみ発生するようです。
(試していないけどiAのローライトや夜景モードでも明るくなるかもしれん)
GH3時代に撮影した動画データ(960x540で中央部切抜き)
▲クリックでピクセル等倍拡大
撮影:GH3 & G X VARIO 12-35mm/F2.8
SS30/F2.8/ISO6400 / PORT -2/-2/-2/0/0
iDレンジは中
その他の設定は初期状態。GH3では、この設定が一番実用的かつ見た目に近く、ノイズも許せる範囲で写った。
※GH3は処分した。このデータしか残っていない。
同条件のGH4で撮影したデータ(中央部切抜き)
▲クリックでピクセル等倍拡大
SS30/F2.8/ISO6400 / NAT -2/-2/-2/0/0 /iDレンジ中
その他の設定は初期状態
GH3と比較して僅かに暗く感じるが、差の無いレベル。
ノイズ的もシャドウの粘りもGH3より全然余裕のある画になった。
GH4で撮影したデータ(中央部切抜き)その2
▲クリックでピクセル等倍拡大
SS30/F2.8/ISO6400 / NAT -5/-5/-5/0/0 /iDレンジ無効
その他の設定は初期状態
GH4でローライト撮る時は、今のところこの設定が一番キレイ。ノイズは気にならない。カメラをパンすると画が少し流れる。僅かにブラーが気になってくる。
GH4で撮影したデータ(中央部切抜き)その3
▲クリックでピクセル等倍拡大
SS30/F2.8/ISO6400 / NAT -5/-5/-5/0/0 / iDレンジ中
その他の設定は初期状態。
かなり明るくなった。GH3と比較すると、iDレンジ利用時の増感の幅が大きく、ノイズも酷く感じる。
GH4の場合、SS60でも実用的な明るさに出来ました。
GH4で撮影したデータ(中央部切抜き)その4
▲クリックでピクセル等倍拡大
SS60/F2.8/ISO6400 / NAT -5/-5/-5/0/0 /iDレンジ弱
その他の設定は初期状態。
ちなみにGH3時代は、この状況でSS60では暗くて撮れませんでした。
iDレンジ強を使うと、SS60でもここまで明るくなりました
▲クリックでピクセル等倍拡大
SS60/F2.8/ISO6400 / PORT -2/-2/-2/0/0 /iDレンジ強
ローライト時、GH4のiDレンジ強はかなり強烈に暗部を持ち上げます。SS60でもSS30の時と同じくらいに明るくなります。
(ただし偽色やノイズはかなり目立つようになる)
GH4で撮影したデータ(中央部切抜き)その6(CineD)
▲クリックでピクセル等倍拡大
SS60/F2.8/ISO6400 / CineD -5/-5/-5/0/0 /iDレンジ弱
その他の設定は初期状態
こんだけ暗いとNAT -5/-5/-5/0/0 と CineD -5/-5/-5/0/0の違いが分からん。
GH3時代、この状況では60Pで撮ると暗くなりすぎてしまい、「実用的でない」と判断してデータを残さなかったのですが、GH4では使えそうな画が出てきます。ノイズの量も(iD強を使わなければ)個人的には許容範囲。ブラーは・・・う~ん、ちょっと酷い。
テスト2: 近所の街灯の下で撮影してみる
近所の街灯。個人的に「この位の暗さまで撮影したい」という基準ギリギリくらいの光量です。
- 余談
以前このサイト内で同じ場所で撮影テストした時のデータは比較対象に出来ません。当時の街灯は蛍光灯でしたが、いつの間にかLED灯に変わっていました。
静止画で撮影したデータ
▲クリックでピクセル等倍拡大
撮影:GH4 & G X VARIO 12-35mm/F2.8
SS30/F2.8/ISO6400 / NAT -5/-5/-5/0/0
その他の設定は初期状態
ちなみにこの場所は、肉眼だと先の調光卓テストの時よりも、数段明るい状況に感じるのですが、写真で撮るとこちらの方が暗く感じます。
あと、以下のデータは家の灯りが点いた状態での撮影になっています。
GH3の撮影データ(LED灯時代)(960x540で中央部切抜き)
▲クリックでピクセル等倍拡大
撮影:GH3 & G X VARIO 12-35mm/F2.8
SS30/F2.8/ISO6400 / PORT -2/-2/-2/0/0 / iDレンジ中か強
その他の設定は初期状態。GH3では、この設定が一番実用的かつ見た目に近く、見た目に近い明るさで写った。
GH4の撮影データ(960x540で中央部切抜き)その2
▲クリックでピクセル等倍拡大
SS30/F2.8/ISO6400 / NAT -5/-5/-5/0/0 /iDレンジ無効
その他の設定は初期状態
卓上灯のテストの時と同じく、GH4でローライト撮る時は、ブラーはちょっと大目だけど今のところこの設定が一番キレイ。ノイズは気にならない。
GH3の頃はよくピントが迷ったが、GH4は迷わない。
GH4の撮影データ(960x540で中央部切抜き)その3
▲クリックでピクセル等倍拡大
SS30/F2.8/ISO6400 / NAT -5/-5/-5/0/0 /iDレンジ中
その他の設定は初期状態
iDレンジコントロールを有効にすると、肉眼で見るより明るく撮れるようになった。
ノイズに偽色が多くなりかなり酷いが、個人的には許容範囲。
ただしブラーのかかり具合は許容範囲を超える。
GH4の撮影データ(960x540で中央部切抜き)その4
SS60(60fps)
▲クリックでピクセル等倍拡大
SS60/F2.8/ISO6400 / NAT -5/-5/-5/0/0 /iDレンジ中
その他の設定は初期状態
やはり、GH3では諦めていたSS60での撮影が、GH4では可能なようです。
ローライト時のブラーについて
GH4はローライト撮影してて、極端に光量が足りなくなった時は、複数枚(5枚くらい?)のフレームを重ね合わせて増感しているんじゃない?てな疑問が沸いたので検証。
検証方法および結果
クリエイティブ動画のMモードで絞り解放で固定し、ISO6400に固定し、SSを極限まで高めて極端な露出不足を発生させ、カメラをブルブルさせてみる。
F2.8 / ISO 6400 / SS250 (やや露出不足なレベル)
▲クリックで別窓表示
まだまだ適正露出の範囲内。ブラーは発生していない。
画面内のフリッカーノイズと、ローリングシャッターの歪みで、カメラを振り回している事、シャッタースピードがかなり速い事が分かるかと思います。
F2.8 / ISO 6400 / SS2000 (過度の露出不足)
▲クリックで別窓表示
画面はメッチャ暗くなったので、PhotoShopで明るさの補正のみかけています。
適正露出の範囲から外れると、GH4のクリエイティブ動画モードは、やはりフレームの重ね合わせで増感して明るさを保つようです。
予想したとおり、フレームの重ね合わせは最大で5枚の模様。
余談ですが、ローリングシャッター現象が小さくなった・・・ような気がするけど厳密なチェックはしていません。
(映像のノイズの酷さから判断すると、例えばセンサーの全画素読み出しを辞めてフレーム全体のスキャン速度をアップし、それを重ね合わせ処理しているんじゃないだろうか・・・?なんてコトも考えたけど、この緑文字の部分は完全に想像だけで書いているので、鵜呑みにしないように。)
GM5でもテスト
GM5同じようにモーションブラーが発生しました。
▲クリックで拡大
GH4と同じく画面はメッチャ暗くなったので、PhotoShopで明るさの補正のみかけています。
カメラの設定は
クリエイティブ動画Sモード
SS 2000 / F 5.6/ ISO3200
NAT -5/-5/-5/0/0
ハイライトシャドウ-2/+2
iDレンジ補正 無効
GM5は動画撮影時の最大感度がISO3200でも、GH2より明るく写るし、GH3並みに高感度耐性があるなあ・・・と感じていましたが、なるほどこういうカラクリがあるみたいですね。
またGM5は、GH4ほど酷いブラーは発生せず、殆ど気にならないレベルです。ローリングシャッター現象が発生していますが、GH4と比較して4~5倍早い速度でカメラをパンしています。
(GM5はゆっくりパンするとブラーは気にならないレベル)
ブラーとノイズを目立たなくする方法
このブラーとノイズは、完全に消すことは無理のようですが、
- iDレンジコントロールは使わない (一番ブラーが出やすい)
- マスターペデスタルは+5~+10程度に納める
- ハイライトシャドウのシャドウ部分は、最大でも+1までで使う
上記のような設定で使う事で殆ど目立たなくなります。
(ただし、ローライト時の撮影は、GH3の時よりチョット明るいレベルまでしか撮れません。)
まとめ
- GH4の方が高感度耐性があるように感じた。
GH4は、GH3より1~1.66段は明るく取れる。画の破綻を気にしなければ、3段近く明るく撮影する事も可能。 - 同じ明るさになるように設定すれば、ノイズ量はGH3と同等かそれ以下。
- ただしGH4は暗部のノイズリダクションの効きが強いので、のっぺりが気になる&ブラーが気になる。
- GH4はノイズやブラーに破綻が起きる所まで増感可能。
そしてネット上で広まっている「ダイナミックレンジを広く撮る設定」は、ローライト時は(すごく明るく撮れるけど)破綻も大きい。 - ブラーの存在に気が付いた所で、「GH3の方が高感度耐性が良い」と言っている人の言い分も分かるようになってきた。
過激に暗部を持ち上げないよう気をつけよう。 - Lumix系のデジカメは、ビデオの場合はスチルと異なり、露出が足りない撮影ではある程度のレベルまで自動で増感される感じ。過去5~6台ほど試しているのですが、いずれもこんな挙動です。
補足データ
近所の街灯撮影場所について。
上のも方で既に書いていますが、いつの間にか街灯がLED灯に変わっていました。
以前このサイト内で同じ場所で撮影テストした時のデータは比較対象に出来ません。
当時撮影し、今も所有しているデジカメLX7で一応の比較テスト。
以前(2013年7月)のLX7の撮影データ
▲クリックで拡大
LX7 ISO6400 / 絞りF2.3 / SS 1/30
今回の撮影データ
▲クリックで拡大
LX7 ISO6400 / 絞りF2.3 / SS 1/60
SSを2倍にした所、ほぼ同じかやや明るいデータが得られました。
街灯の明るさは2倍強になっている模様です。
今回の検証はここまで。
ハイライトシャドウやマスターペデスタルなど、GH4で加わった機能を使ったチェックきは「GH4の極端なローライト撮影時の性能チェック - その2」に掲載しています。
あとがき・余談
検証を進めるうちに、ノイズよりブラーの方が気になり、ブラーばかりチェックしてました。んで、過去に撮影したデータをチェックすると、GH3やLX7でもこのブラーは発生していますね。今までは気にならなかっただけのようです。
んで、このローライト環境下のモーションブラーを何度も確認しているうちに、あらゆる動画のモーションブラーを一瞬で検知できる変な動体視力が身についてしまいました(^_^;
そんな能力に目覚め、ようやく気が付いたのですが、テレビを見てても暗所撮影されたシーンには似たようなブラーが一杯発生していますねえ。
- バラエティやドキュメンタリーの暗所撮影では、大抵このブラーが入っています。
- ドラマの場合、通常は明るい所で撮影して編集で暗く見せるか、青いライトで暗さを表現するので、このブラーは滅多にお目にかかれません。
- しかし一番予算を使っていると思われるNHK大河ドラマでは、随所にこのローライトブラーを確認する事が出来ます。
うーん。NHK大河ドラマは本当に暗い所で撮影しているシーンが一杯あるんですねえ。そして業務用のカメラでも、暗所は複数フレームを重ねて増感させているようですね。
これは、ブラーの発生に文句を言うよりも、ブラーが目立たなくなる撮り方を考えなければ、この先ずっと悩む問題になりそうだ・・・と感じました。